六代川端近左漆芸展-東玉堂

六代川端近左漆芸展 六代川端近左漆芸展
↑東玉堂様パンフレットより

東玉堂に於いて開催されていました「六代川端近左漆芸展」に行ってまいりました。

会場に入ると、そこには棗、香合、菓子器を中心とした近左先生の作品がずらりと並んでいました。
一点一点、非常に貴重で美しい作品であるのに、100、いや200は優に超えるであろう数が展示されている様は壮観でした。

感心して眺めていると、「お茶をどうぞ」と店員さん。
得意客でもない私のような者にもお茶をふるまってくれるんだなぁと恐縮しながら、お茶とお菓子を美味しくいただきました。

そうこうしていると、近左先生の公演が開始。
すごく気さくな方で、実際の道具や実演を交えて、漆芸について分かりやすく説明してくださいました。
塗りや木地の種類の話、制作工程の話、お手入れの話など、どれもとても勉強になる面白い内容でした。

印象に残ったお話をいくつか。

棗の形状のお話では、
中棗、小棗、吹雪など多くの種類があるものの、
広間の茶会が主流になった現在では制作する棗の9割方が大棗であるとのことでした。
マンションなどの住宅事情によって、仏壇でも何でも小型化していると思っていましたので、これは意外でした。
現代において、茶の湯がいかに実生活から乖離してしまっているかを示す数字ということでしょうか。

お手入れの話では、
お茶会などでベタベタ触られた棗は、ぬるま湯で丁寧に洗ってやってくださいとのことでした。
から拭きだけだと、どんどんくすんでいってしまうそうです。

制作のお話では、
漆は新鮮なものでないと美しい輝きにならないこと、
乾燥させる際に最も乾きやすいとされる湿度より少し下げてゆっくり乾かしていること、
50年、100年後に生ずるであろう木地の歪みを考慮して蓋を少しゆるめに作っていること、
などをお話しいただき、驚くばかりの細やかな職人技によってあの美しい器が出来上がっているということがよくわかりました。

近左先生の多くの作品を間近に拝見でき、直にお話まで聞くことができて、大満足の一日でしたが、もう一つ嬉しいことがありました。

それは、近左先生の息子さんである、川端宏房氏の作品を拝見できたことです。
近左先生の作品はお茶会などでお見かけしますが、宏房氏の作品は、失礼ながら初めて拝見しました。
写真がないのが非常に残念なのですが、以下のリンク先で雰囲気はお分かりいただけると思います。
新感覚漆芸!川端宏房漆芸展開催中! It Art! ~なんば美術手帳~
癒しの空間♪ 神山直彦 作陶展 & 川端宏房 漆芸展 開催中 アート de ほっこり

真塗りや溜塗りで美しく塗られた棗や菓子器に突然ポップな「もへちゃん」なるキャラクターが描かれていたりして、ポップアートの様相です。
面白いな~と思って観ていたのですが、何と会場に宏房氏もいらしていたのです。
ご本人を見て合点がいきました。
この作品は、この方の中から滲み出た極々自然なものなのだと。
これらのポップな漆器をちょっと変わっていると思った自分が間違っていたようです。
おそらくこの方にとっては、伝統的な文様を描くことも「もへちゃん」を描くことも同じことで、その間に特別な境界は存在しないのではないでしょうか。
それほど、作家さんと作品が真っ直ぐに素直に結びついている印象を受けました。

ちなみにこの「もへちゃん」、モデルはご本人なのではないかとお聞きしたところ、ご本人ではなく花の妖精であるとのことでした。

将来、七代近左を襲名されてからも、このお花の妖精は形を変え、あるいは形はなくなっても作品のどこかで生き続けるのでしょうか。

楽しみですね。

(NHK水曜 F.M. 記)



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