秋の花と聞いて思い描きますと、紫の花が多く浮かんできます。
秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七草の花
萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志 また藤袴 朝貌の花
秋の七草の中でも、尾花(おばな)と女郎花(おみなえし)を除いて、すべて紫色の花です。
これ以外にも、杜鵑(ほととぎす)、竜胆(りんどう)、秋桜(こすもす)などが浮かびます。
なぜ秋は紫の花が多いのでしょう?
科学的には、様々に解説されています。
花は昆虫や鳥に受粉を手伝ってもらうために、目立つ色になっており、自分にとって都合のよい虫の”好み”に合わせて色や形を変化させてきた。
そのため、春は蝶の好みに合わせて黄や白の花が多く、
秋には動きが活発になるハチの好みに合わせて紫の花が多い。
というものです。
さらに、紫の花はハチ以外の虫が来ないように形状を複雑化しているものが多いそうです。
虫なら誰でも良いわけではなく、しっかり選んでいるんですね。
花はよく女性にたとえられますが、紫の花は、
群がる男を振るいにかけるために敷居を高くしている、「近寄りがたい女性」といったところでしょうか。
紫は昔から高貴な色とされていますが、この辺りの感覚が人間と花や虫の世界とで似ているようにも思え、とても興味深いです。
美しい色、色の組み合わせについても、
虫が見ている色は人間が見ている色と違うにもかかわらず、虫が求める色と人間が美しいと思う色が似ているというのは不思議な気がします。
しかし、一見不思議なことですが、
人間の色彩感覚、美意識が、絶対的なものではなく、自分たちの周りの世界、自然によって形成されてきたと考えると、当然のことなのかもしれません。
「花は野にあるように」
自然によって与えられた美意識は自然の姿を最も美しいと感じるのでしょうか。
(NHK水曜 F.M. 記)