3月は、NHKで武者小路千家の茶の湯が紹介され、熱田神宮月釜がございました。何かとあわただしい中、お稽古の際に、先生から「呼吸を整えて落ち着いてお点前してください。」とご指導いただきました。日常においても大切なことだと思いました。ひとつ、ひとつの所作を通して精神を整えていくということも茶の湯の魅力の一つではないかと思います。今月もお稽古できるようにご用意いただいた先生、先輩方にまずお礼申し上げて、先に進めさせていただきます。
3月と言えば、ひな祭り。お掛物だけでなく、寄付に雛人形をお飾りいただきました。お人形はとても華やかで凛としていまして、私も襟を正そうという気持ちになりました。このようなご趣向を拝見できることは本当にありがたいです。
寄付きのお掛物は燕だと思われます。毎年鹿児島には2月中旬、関東には3月中旬から、4月上旬に燕が渡来するとありますので、京都ではちょうど3月初旬くらいに渡来するかと思われます。春を感じるお掛物をご用意いただきました。
主菓子は蛤の形の上用饅頭。
お料理でも蛤真丈や浅利酒蒸し、鳥貝や赤貝のぬたなど貝類を使うことが多いかと思いますが、主菓子に蛤というのも楽しいです。職業柄、魚介類に反応してしまいます。ひし形の菓子器でご用意いただきました。少し位置が悪いのは私の責任です。申し訳ございません。
長板に朱塗の手桶水指をご用意いただきました。
朱塗と真塗の色合いが鮮やかで、洗練されている雰囲気がいたしました。一見シンプルに見える時ほど、お点前に視線が向くことが多くなるように感じます。手桶水指の蓋の扱いもお勉強です。緊張しながら、お稽古させていただきました。
お棗は柳の蒔絵で雄峰作。
お掛物は「笑語桃花酒」当代御家元様の筆です。禅語が由来ではないかと思って調べたのですが、明確な意味を見つけることができませんでした。桃花酒(とうかしゅ)を調べましたら、「曲水の宴」という催しがあったことがわかりました。
以下、説明文を拝借いたしました。
・・・・本来、『桃の節句』では『桃花酒(とうかしゅ)』が飲まれていました。これは、日本酒などに桃の花を浮かべ浸したもので、桃は『百歳(ももとせ)』にも通じ、邪気を祓い不老長寿を与える植物とされるところから来ています。平安時代の貴族たちは、3月3日に『曲水の宴』と呼ばれる、水の流れに杯を浮かべて、自分の前を通り過ぎるまでに詩歌を読み、できなければ罰として盃の酒を飲むという行事を催し、その際に桃の花を盃に浮かべた『桃花酒』を飲んでいたのだそうです。
『桃花酒』を飲むことは、江戸時代に『白酒』が登場するまで続けられていた、平安の昔に由来する、ゆかしき『桃の節句』の風習です。以上。
「笑語桃花酒」というお掛物で、曲水の宴が目に浮かんでくるような気がいたします。
蓋置は、テレビ放送のテキストにも掲載されていましたが、雪洞(ぼんぼり)の蓋置をご使用いただきました。
「灯りをつけましょ・・」ですね。これから、何年経過しても、雪洞の蓋置を見る度にテレビ放送のテキストを思い出すような気がいたします。
主茶碗 辰砂のお茶碗。
松江の鼓窯だそうです。辰砂というものは硫化水銀でできた赤色の釉薬のようですが、配合の違いなどからか、紫辰砂釉と呼ばれているものや、辰砂と呼ばれている釉薬で弱還元状態で焼くと薄い水色や淡い紫など発色すると書いてあるもの、酸化状態で焼くと水色に仕上がるという情報もございました。ご用意いただきました辰砂は青く仕上げられたものということでよいかと思います。刷毛で塗られたように出ている紫色も作り手さんの創意を感じます。たなごころもよく、薄い水色にお抹茶の緑が鮮やかでした。
替茶碗は釣り雛のお茶碗をご用意いただきました。 楽しいお茶碗ですね。
お花入れは古染付。お花は椿が藪椿、菜の花と麦の穂
そして月光、レンギョウ、麦の穂
椿、見分けがつかないことばかりですが、名前は少しずつ耳に慣れてきているように思います。様々な種類のものをご用意いただいているので、少しずつでも覚えられたらいいなと願うばかりです。
今月も楽しくお稽古させていただくことができました。3月は多方面でお忙しい中、ご用意いただいたことと推察いたします。先生、先輩方に重ねてお礼申し上げます。(M.D記)