先日の
に関連して、重森三玲さんの著書を読みました。
茶室と庭 (1962年) (現代教養文庫)
茶室と茶庭見方・作り方 (1966年)
日曜美術館で拝見したところ、
重森三玲さんが自ら設計した自邸の茶室「好刻庵(こうこくあん)」は草庵茶室ではなく、
露地も枯山水のようで、一般的な露地とは違っているようでした。
そこで、重森三玲さんが茶室・茶庭についてどのように考えていたのかを知りたいと思いまして、
この2冊を手に取りました。
重森三玲さんは壮大な石組みによる枯山水庭園をいくつも造ってきた人ですから、
茶庭は物足りなくて興味がなかったのかと思ったのですが、
これらの本を読んで、それが全くの間違いであることが解りました。
興味がないどころか、興味大ありです。
重森三玲さんという人、庭だけではなく茶室にも造詣が深く、何より茶の湯に対しての情熱が並大抵ではないです。
待庵や如庵など、いくつもの名席をもとにして、
茶の湯の起こり、茶室・茶庭の歴史、など事細かに解説していただいているのですが、
茶室や茶庭への拘り、情熱が溢れ出ているといった感じです。
そのためか、内容は極めて主観的とも感じるほど、良し悪しがはっきりと述べられていて、気持ちの良いくらい辛口です。
・(又隠の乱れ飛石について)躙口付近の飛石としましては、この右にでるものはありませんでしょう。
・(湘南亭について)近年の国宝修理で藁ずさの壁が不手際な仕上げとなりましたことは惜しむべきです。
・(時雨亭・傘亭について)両亭をつなぐ渡廊は、もともとどんなものであったのかよくわかりません。現在のものは軽すぎて調子がとれていないと思います。
など・・・
批判的な内容も自信の現れでしょうが、なるほどと思うことばかりです。
好刻庵については、以下の記述がありました。
(好刻庵の路地について)
書院の庭を、そのまま路地風に利用することも興味がある。
だが、もとより茶庭としての本格的なものではないから、正式な迎付などはできない。
しかし、それだけに、観賞的に興味が深く、軽い茶会などには大いに利用できるし、人々に喜ばれるのである。
書院式の茶会などの場合には、これで差支えないのと、しかも気軽に用いることができる。
好刻庵が造られる16年ほど前に「無字庵(むじあん)」という草庵茶室を造っていたため、
第二の茶室である好刻庵は書院式として、露地には実験的な意味合いも含まれていたようです。
無字庵は非公開ですので、仕方ありませんが、むしろこちらの茶室をテレビで拝見したかったです。
枯山水の露地については、次のように述べられています。
私は利休居士以後の深山幽谷の考え方が、あまりに近視眼的だという風に考えています。
もっと広度な、そして、もっと高度な立場から、深山幽谷の表現を再考してみる必要があると思います。
それ故に、昭和30年12月、私が作庭した驢庵の路地は、一木一草を用いませんでした。
飛行機やヘリコプターから俯瞰したような広範囲な大自然の表現ということを目標にしました。
これには賛否両論ありそうですが、
常に現代の茶の湯のあり方を真剣に考え、創意工夫を怠らず、
「永遠のモダン」を目指した重森三玲さんの生き方は大いに見習いたいものです。
(NHK水曜 F.M. 記)