先日の日曜美術館で
吉岡徳仁さん作 ガラスの茶室「光庵(こうあん)」が紹介されていました。
http://www.tokujin.com/art/art-piece/#gallery-kouanglassteahouse%E2%80%8220112015
京都東山の頂、将軍塚青龍殿の大舞台に現れた透明なガラスの茶室。
番組内で吉岡徳仁さんは制作意図について次のように述べられていました。
ただ自然に溶け込むだけではなく、自分にとって光というものがすごく大事で、
光を物質化したいという思いで造りました。お茶の文化の延長線上にある新しいモダンな茶室を作ることには興味がなく、
なぜ茶室というものが生まれたのかを知りたかった。
と。
そして、光庵の中に入った井浦新さんは、おっしゃっています。
ガラスによって開放的で自由なはずが、自由すぎて、
自然への畏怖の念が勝り、茶室というより修行場のようだ
と。
こればかりは、テレビの映像だけでは解りません。
機会があれば行ってみたいと思います。
ガラスの茶室といえば、杉本博司さんの「聞鳥庵(もんどりあん)」もあります。
http://openers.jp/article/23350
こちらはヴィネチア・ビエンナーレ2014で発表されたもので、
ガラスの茶室だけではなく、水の露地や垣根を含めて作品となっています。
正直な所、最初はダジャレ?ヴェネチアだから水とガラスって、そんなストレートな・・・、
と思いましたが、写真だけでもよく見ていると、そんな第一印象を持ったことを謝りたくなってきます。
茶室の全体的なフォルムを木造数寄屋造りの茶室の形ではなくキューブ状にしたところ、
躙口と茶道口だけ木材を使用したことによる素材コントラストの妙、浮遊感、
そして天井を高くしたことによる効果、露地の水深にタイルのサイズや柄等々、
細部にまで心を砕かれたことがじわりと伝わってきます。
実際、どのような考えで創作されたか、私ごときには知り得ませんが、
茶の湯の精神性だけヴェネチアへ持って行って、茶室というものを新しく考え直したら、こうなりました、
といった印象を受けました。
そして、確かにモンドリアンの抽象画のような感じもします。
日本の茶室や日本庭園をそのまま海外に移築して、日本の文化を理解してください、
といったことがよく行われていますが、これだと多くは伝わるのですが、意外と重要な部分が伝わらない気がします。
「光庵」や「聞鳥庵」のように抽出、デフォルメをしたようなアートの形の方が、
日本人の根底に流れている美意識や自然との関わり方といった面は良く伝わるのかもしれません。
同時期に発表された、これら二つのガラスの茶室、
似て非なるものといった感じもしますが、どうなのでしょうか。
本当の所は、実際に中に入ってみなければ解らないのかもしれません。
(NHK水曜 F.M. 記)