先日、神津朝夫著『千利休の「わび」とはなにか』を読みました。
内容はというと、今まで読んできた一般的な茶の湯関係の本とは、
まるで違うことが書かれており、非常に興味深いものでした。
ネタばれになるので、あまり多くは書けませんが、
利休の師匠は武野紹鴎じゃなかったの?!
とか
珠光は禅宗じゃなく、浄土宗の僧侶だった?!
とか・・・
ここで書かれていることが正しいかどうかはわかりませんが、
茶会記などの史料を細かく調べ上げて、それを基に理論が展開されていますので、説得力はあるように思います。
待庵がなぜつくられたか、についても想像も織り交ぜて書かれていますが、確かにありそうな話だと思いました。
また、神津氏は「南方録」に代表される偽書が世の中に広まってしまったために歴史が歪められたと、この本の中でおっしゃっています。
「露地」「懐石」「台目」「茶道」「わび茶」などの用語・漢字・概念は利休時代にはなく、南方録で初めて使われたとのこと。
南方録については、私が茶の湯に興味を持ったときには既に偽書と言われていましたので、何となく避けてきたのですが、上記の用語の件だけを見ても、どうやら間接的に南方録を読んできていたようです。
歴史は勝者によってつくられると言いますが、
お茶の世界においても、大人の事情等で史実や思想が正しく伝わっていないことも多いであろうことは、
頭の片隅に置いておいた方が良いのかもしれません。
(NHK水曜 F.M. 記)