旅館の床の間

少し前にテレビで独身貴族の休日に密着といった内容の番組が放送されていました。
ビジネスで成功されたアラフォーの男性を取材していて、休みの日に一人で温泉に行くのが楽しみとのことで、その温泉旅行に密着していました。

車で高速道路を走り、いざ温泉旅館へ。

温泉旅館に到着して部屋に案内された彼は荷物を仲居さんに預けることなく、自ら運んでいました。
それなりの地位を築いた人なのに偉いものだと感心していた次の瞬間、
部屋に入った彼は

荷物を迷わず床の間に置いたのです。

旅館の床の間を荷物置き場だと思っている人、結構いるみたいです。
と言いつつ、自分もお茶をやっていなかったら、同じことをしていたかもしれないと思うと、背筋が少し寒くなりました。

世代的に仕方ないのかもしれません。
住宅から和室がどんどん消え去り、核家族化でおじいさんおばあさんから床の間の意味を教わることもなく、ましてや学校でもそんなこと教えてはくれません。

旅館は旅館で、子供が花瓶を割る、掛け軸を破ると言ってそれらを撤去し、畳床から掃除の楽な板床に変え、スペースの有効利用としてテレビを置く。
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もはや完全に床の間の機能を失ったその空間は、やはり誰が見ても荷物置き場です。

もちろん高級旅館と言われるような旅館では、子供が泊まろうが、軸や花で床をしつらえてあります。

床の間が床の間として使用されている部屋は居心地の良さが全く違います。
少し背伸びしてでも、そのような旅館に泊まりたいものです。

(NHK水曜 F.M. 記)



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