茶室の定義とは何か?
いきなり難しい表題から始まってしまいました。
もちろん、このよう問題について、私がどうこう語れるわけもないのですが、
どうしても考えてしまいます。
「躙り口があること」「蹲があること」などは多くの茶室が備えている特徴であって、
それがないと茶室ではないというものではありません。
柱や畳、炉の寸法など、一般的な値はあるようですが、この寸法でなければ茶室でないというわけでもありません。
何かの本で、茶室の定義とは「茶事が行える空間であること」と読んだことがあります。
しかし、茶事が行える空間というのも実に曖昧で難しい内容だと思います。
機能的に茶事が行えるような設備が備わっているだけでなく、美的空間としても茶事に耐えうるものでなければならないという意味だと思いますので。
結局、茶室の定義は茶の湯の定義に依存しているということでしょうか。
では、茶の湯の定義とは?
益々わからなくなってきました。
そこには、まったく触れることはできませんが、おそらく明確な答へはないのだと思います。
その一言では言い表せない、曖昧で深淵なところが茶の湯の魅力となっているような気もします。
茶室の定義ではないですが、
以前、中村昌生先生の公演を聞きに行った際に、茶室を造るときの指針として、
珠光紹鴎時代之書の言葉を引用されていました。
「座敷の様子 異風になく 結構になく さすがに手ぎわよく 目にたたぬ様よし」
「異風になく」は、ことさら一目を惹くような風変りな表現を避けるという意味で、
「結構になく」は、立派に見せないということ、
「さすがに手ぎわよく」は、洗練されたデザイン、
「目にたたぬ様」は他と競い合うことなく控え目であるように、
という意味だそうです。
なるほど、このような思いで造られた建物は、居心地が良さそうな気がします。
一般の住宅でもそうですが、
異風で結構で手ぎわが悪くて目にたっている
家に招かれたとき、凄いな~とは思っても、そこに長く居たいとは思いませんからね。
気を付けたいものです。
(NHK水曜 F.M. 記)