先週、平成27年1月15日、熱田神宮月釜に行ってきました。
昨年末からお天道様に見放されているようで、当日はひどいドシャ降り。
初詣で賑わっているはずの境内も人がまばらでした。
御茶を美味しくいただくために、まずは腹ごしらえ。
「宮きしめん」へ。
雨が激しく叩きつけるテントの下、寒さに身を縮めながら頂くきしめんは特別美味しく感じます。
強さを増した雨の中、濃茶席待合いへ。
ここで、また雨の効能が。
いつもは待合いの席すべて埋まるほど人が並んでおり、1~2時間は待つのですが、この日は先客がだれもいないという状態。
次の席にただちに入ることができました。
席中の写真は撮れませんでしたが、覚えている限りで会記を書いてみます。
間違いがありましたら、ご指摘いただけると助かります。
熱田神宮月次献茶 濃茶席
平成二十七年一月十五日
主、 宗偏流 寺尾康時
於、 蓬庵
寄付
床 長生殿の図 清香
福禄寿 白圭
本席
床 天祐筆 福寿海
花入 流祖作 尺八
花 白玉
釜 野溝型釜 道也
縁 栗
水壺 禮寶三島
茶入 肩衝 仁清
茶碗 井戸 銘 園城
茶杓 宗旦作
蓋置 青竹
御茶 初昔 妙香園詰
菓子 福寿草 きよめ餅製
お点前が見られなかったのは残念でしたが、
席主が実際に釜の蓋をとって湯気の立ち上る様子を見せてくれたり、
細かく説明をしてくださいましたので、十分に雰囲気を味わうことができました。
力強い筆の「福寿海」は「海のように沢山の福がみなさんに訪れますように」との思いで掛けたと
おっしゃっていましたが、歳を重ねた男前の席主に言われると、本当に福をいただいたような気になります。
豪快な筆と対比するように、宗偏作の尺八花入れは実に詫びた表情で、白玉椿がそっと入れられておりました。
井戸茶碗は幾年の時代を超えてきた証として、その時代時代の継ぎ跡が残されていました。
その継ぎ目の多くは一見わからないように継いであるのですが、
一つだけ大きくコの字型に割れている部分だけ金継ぎが施されていました。
この割れ目の形に何か思うところがあったのか、割れた状況によるものかわかりませんが、
この部分を鑑賞するべく金で継ぎ、利休の竹花入「園城寺(おんじょうじ)」と同じく「園城」と銘をつけられたそうです。
他にも宗旦の茶杓や禮寶三島(らいひんみしま)の水指など、貴重なお道具の数々を目にすることができ、幸せな一席でした。
続いて、薄茶席の又兵衛へ。
熱田神宮月次献茶 薄茶席
平成二十七年一月十五日
主、 松尾流 松尾宗典
於、 又兵衛
寄付
床 ゆずり葉と海老 宗倫
本席
床 松千歳翠
花入 青竹
花 白わび助、卜伴
釜 先代忠三郎造
縁 森川(如春庵)家古材
水指 飴楽 箪瓢
茶碗 赤 えびす土産の絵 吉佐衛門造
茶杓 楽只斎作 銘 梅の露
蓋置 青竹
御茶 初昔 妙香園詰
菓子 福寿草 きよめ餅製
遊び心を感じる初釜のお取合せでした。
水指は箪瓢という銘?ですが、
これは、瓢箪は通常上の膨らみが小さく下の膨らみが大きいところを、
この水指は逆に上の膨らみが大きく下の膨らみが小さいため「箪瓢」だそうです。
お茶碗の絵は何代前かのお家元が楽さんのところに寄ってでサラりと描いたものだそうで、温かみを感じるものでした。
また、陰点てのお茶碗は、地元の作家さんを中心にして様々な種類を出して頂いたので、見ていて楽しいものでした。
雨には降られましたが、待たずにゆっくりお茶を頂くことができて、逆に良い思いをしました。
雨の日の月釜、お奨めです。
(NHK水曜 F.M. 記)